2016-01-01から1年間の記事一覧

Co-dependency Epilogue

(……ん……) かすかな音を耳に拾って、カカシの意識が浮上した。重い瞼を開いてぼんやりと見えてくる光景で、自分が横を向いて寝ていることを認識する。瞬きをする度にクリアになっていく視界に入り込む、ひとつの影。それをどこか夢現な状態で見やり、無意識…

案山子が見た夢、カカシの見る夢

だから、オレは案山子(カカシ)になるよ。 この、木ノ葉の里という、かけがえのない地を見守り育む、案山子にね。 そして、新しい風を待ちながら、 やがて訪れる豊穣の時を、 夢見てる――――。 【案山子が見た夢、カカシの見る夢 完】

案山子が見た夢、カカシの見る夢

――後世の歴史家は、火の国木ノ葉隠れの里の歴代火影について、 次のように記している。 初代柱間は創世を、 二代目扉間は秩序をもたらし、 三代目ヒルゼンは安寧を築いた。 四代目ミナトは激動の時代における希望を生み出し、 五代目綱手は過去と未来を繋い…

キミが生まれた日。

キミが生まれた日。 今朝方、目覚めてまず顔を洗うために洗面所に行く道すがら。 任務のため妻よりも先に起きた夫が消し忘れたのだろう、消音に近い状態でつけっぱなしになっていたリビングのテレビを、欠伸をしつつ、通りしなに何気なく見た。 それはちょう…

ボクが生まれた日。

――誕生日は、好きな日にしていいよ。 非道な人体実験を行っていた施設からからくも逃げ出したひとりの子どもが里に救出されて、数か月が過ぎた。 うだるような熱気が視界を揺らめかす夏がやっと通り過ぎ、夏の間中容赦なく降りそそいだ陽光のすべてを受け止…

日々是テンカカ そのろく。

※今回ボリューム少なめです※ ■そういえば寝顔を見たことがないな。それに気付いた俺はその夜の執拗な攻めを何とか耐え抜いて、アイツが寝落ちるのを待った。腕の力が抜けた頃を見計らい、そっと顔を見やる。そして、思わずその胸に顔を埋めた。耳先まで熱く…

【Silent Spring覚書】神樹と十尾とチャクラとカグヤ

■はじめに■ 小説の題材として『チャクラ』というものを取り扱うにあたり、改めて、チャクラとは神樹とは何ぞやと考えはじめたら、幻術の無限ループに陥ったので、一度まとめてみようと思いました。ですが、原作を読み返してみても、神樹・十尾・(外道魔像)…

A Cruel God Reigns

「……来たか」 複雑に構築した結界の揺らぎを感じ取り、彼は静かに立ち上がった。 ――これで、六度目。 望む結果は未だ得られていないが、回を重ねるごとに確かな手応えがある。 『子どものアナタは私の言うことだけ聞いていればいいの』 始まりの合図はこの言…

reflection

実験の手伝いを命じられた時、正直何で自分が、と思った。適任は他にいるだろうと。 おそらく、それがそのまま顔に出ていたのだろう。今でも逆らえぬ上司のような立ち位置にいるその人物は、「香燐はサクラと仲が良いみたいだから、口を滑らされても困るしね…

Co-dependency(17)~(20)

17 二人の影が重なり合ったのは、ほんの数秒。カカシはぱっとテンゾウから離れると、口布を引き上げる。普通に伝えれば良いものを、なぜこんな形で伝えてしまったのか。 テンゾウの姿を見ていたら自然と身体が動いていたのだ。カカシを真っ直ぐに見つめてく…

Co-dependency(14)~(16)

14 ――ひたり、と足元に押し寄せる波があった。 周囲の闇は、その領域に踏み込んだカカシを拒絶するような重苦しい圧迫感で迫ってくる。 カカシの胸元で輝く花は、贈り手(リン)のように優しく、決して消えることのない確かな輝きで、カカシを飲み込もうと迫り…

自家通販について

※お申し込みの前にご一読下さい※ 私自身、他の方の作品のみならず自作品であっても、気に入った作品はたとえwebなどで完全公開されているものであっても紙媒体として手元に置きたい派です。また、諸事情あって同人誌を購入出来ないという方もいらっしゃるか…

SCC新刊本文紹介

■案山子が見た夢、カカシの見る夢■ ※表紙の家紋と裏表紙の木ノ葉マークは箔押し加工です※ ❖シーン①❖ ――やがて、あの強く誇らしかった父が、任務遂行よりも仲間の命を優先したことで周囲から誹謗中傷を浴びるようになってからは、カカシはさらに深くふかく心…

Co-dependency(13)~(15)

13 ――真っ直ぐ、下に向けて落ちていく感覚だった。 そこは一面に広がる闇の世界だったが、テンゾウに繋がる場所だと思うと不思議と恐ろしさは感じなかった。カカシの胸にはリンからもらった光の花がぽう、と輝き、カカシの行く手を淡く照らし出していた。 ど…

Co-dependency(10)~(12)

10 アレレ?と幼いテンゾウの姿を模したそれは、小首を傾げた。 緑の触手に絡めとられ、辺り一帯に満ちた毒の香りで意識を失ったカカシから、何やらひどく懐かしくて親しんだ気配がする。 わくわくした心持ちを感じながらふわりとカカシに近付いて、さらにそ…

Co-dependency(7)~(9)

7 ――それでも、オビトもそのことには気付いていたのだ。 己を縛るすべての柵から解放され、有限の身を離れたオビトは、果て無く続くと思われる平地をリンと共に歩いていたが、やがてその足を止めた。 ――足が、重い。 (…………) 「オビト?」 オビトの手を取り…

Co-dependency(4)~(6)

4 暗闇に沈む石畳の通路を、銀色の風が音もなく疾走していく。そのすぐ隣を四本足の小さな影が並走していた。 通路を照らす灯火などは全くなかったので、カカシは光量をぎりぎりまで絞った携帯用ライトを右手に掲げている。あまりに明るくして見晴しをよくし…

設定&考察

■Original setting & consideration of Tenzou■ 2016/03/17 ※年齢に関しては大体この程度、な感じです。時系列などは他のナルトファンの方々の作られた詳細年表を参考にしているところもあります(データ系の『~の書』関連は読んでいないので)。矛盾点を見…

コメントお返事

◆2016年◆ (03/28) n美さん、pixivではいつも拙作品を見て頂きありがとうございます。こちらにもいらして頂きまして本当にありがとうございました!キチェスなテンゾウに同意して頂き、他作品へのもったいないお言葉、とてもとても嬉しいです(^^)。「それ…

お知らせ関連

◆2018年◆↑新↓旧 (8/9)遺伝子シリーズに『Silent Spring(4)』をアップ。 ◆2017年◆↑新↓旧 (9/18)kakashiシリーズに『それをきっとひとは幸せと呼ぶのだろう。』をアップ。 (7/10)遺伝子シリーズに『Rebellion against genes』をアップ。 (6/22)遺伝子シリ…

銀色薬草園メールフォーム

ご訪問ありがとうございます。 拙い作品群ではありますが、感想など頂けますと大変うれしく思います。 頂いたコメントへは、よりよい形が見つかりますまでこちらのページでお返事させて頂きますm(__)m

Co-dependency(1)~(3)

(表紙協力:ぼろめがね様) ―――……シ! ――――バカカシ! おい、いつまで寝てんだ、早く起きろ!! 1 飛び込んできたその声は、午睡を貪っていたカカシの脳を直接震わせるような衝撃で、たまらずカカシは、ばちっと目を開けた。 ぼやけた視界に最初に見えてき…

日々是テンカカ そのご。

※※今回はお題やネタをメモするのを忘れてしまったものが多いです※※ ■里を抜けたと聞いた時、胸を貫いた感覚の名をあの時のオレは知らなかった。唯一無二の木遁の術者を他国に渡す訳には行かず、追忍としてかつて教育係だったオレが選ばれた。だが、逃走する…

その他

1:My name,Your name 名前の話。テンカカベースでサイいの要素あり。サイ視点。 『テンゾウ』と『ヤマト』の名前はどこから来たか(むろん捏造)。

My name,Your name 

名前というものに価値を見出したことはなかった。 それは単に個体識別をするための手段もしくは道具に過ぎず、任務ごとに与えられ、そして任務が終われば、また新たなモノが支給される。その名を名乗る期間もまちまちで、一日しか使わないこともあるし、長け…

Silent Spring (3)

(3) (……あつ、い……) 心臓の中心で、ごうごうと炎が燃えている。燃え盛るそれは還流する血液を沸き立たせ、心臓の拍出に伴って濁流のように全身を巡る。熱せられた血液は身体の細部にまで送り届けられ、全身を焼き尽くすようだ。 燃え尽きてしまいそうに熱…

Silent Spring (2)

(2) 電子カルテの導入に伴い、通常業務が終了した後に、自室で自分が担当した患者の数年分の検査データをパソコンに入力していたサクラは、あれ、と呟いた。 「やだ、ヤマト隊長、貧血気味だったの……?」 手にしたカルテに記載されているここ数年分の血液…

Silent Spring (1)

――例えて言うならばそれは、大海に落とされた毒にも似て。 どれほどの大波に洗われて薄まろうとも、その毒が決して消えることのないように。 長きに渡るあの大戦の後遺症は、静かに、けれど確実に、この星を蝕み始めていた。 Silent Spring (1) 大いなる厄災…

the past,the present,and the future

――進んだ先、視界に映り込んだ光景に、ヤマトは痛ましげに目を伏せた。 もう何年も人の手が入らなくなり、今にも崩れ落ちそうな廃墟の裏。 その片隅にまるでガラクタのように無造作に積み上げられているのは、無数の骨だった。火葬されたのではなく、死後、…

Sequencing

――それもまた、彼が何度も行ってきた実験のひとつ、否、もしかしたら戯れと称される類のものだったかも知れない。 かつて、命のあまりの脆弱さに絶望した。 誰しもが尊いというけれど、いとも容易く失われるその軽さを、軽蔑した。 有限の命を無限とするため…