2017-01-01から1年間の記事一覧

それをきっとひとは幸せと呼ぶのだろう。

その知らせを受け取ったのは、四季折々の里の姿を一幅の風景画のように見ることができる火影室の窓が、けぶるような雨の薄膜に霞むある日のこと。 肌に張り付くような粉糠雨が朝から音もなく降りしきり、家々から流れ出る夕餉の香りに里が包まれる時刻になっ…

Rebellion against genes

はじまりは、単純な動機。 手のひらにのせた真白の蛇の抜け殻。脱皮を終えてからさほど時間は経っていないのだろう。触れてみたそれは、まだしっとりとした感触をしていた。 抜け殻自体にもはや生は存在しないのに、そこに感じたのは確かな生命力。力強さ。 …

Heterogeneity

六月某日、任務終了後。 用事を済ませ、邪魔になるからと下忍待機所に置いていった私物を取りに来たサラダは、空っぽの部屋にひとり残っていたミツキを見つけた。 「ミツキ? あれ、ボルトは先に帰ったの?」 同じ班の所属とはいえ、常に一緒に行動しなけれ…

Sequencing -序―

はじまりは、単純な動機。 手のひらにのせた真白の蛇の抜け殻。脱皮を終えてからまださほど時間は経っていないのだろう。触れてみたそれは、しっとりとした感触をしていた。 抜け殻自体にもはや生は存在しないのに、そこに感じたのは確かな生命力。力強さ。 …

Verkündigung

それは、第四次忍界大戦が終結して数年経過したときのこと。 「――綱手、アナタ、子どもを産んでみない?」 それまで交わしていた世間話のような流れでするりと言われた、けれどまったく予想だにしないその言葉に、綱手は口に含んでいたお茶を盛大に噴きだし…

peractorum

無意識に、首に触れていることがある。 正確には、印が刻まれていた、あの場所を。 探るように触れた指先は、なにも伝えてくれやしない。 深い痛みも、疼くような熱も、今はなにも感じない。 そこにはただ、冷たさを感じるだけ。 peractorum 印だけを残され…

うつろわざるものからうつろうものへ。

今日が、うずまきナルトと日向ヒナタの結婚式だという。 このふたりの距離があの大戦を経てより近しいものとなっていったことは、ゴシップ好きの部下が命じてもいないのに口やかましく話し立てるので知り得ていたし、九尾を身に宿した青年と白眼の姫という優…